プロの泥棒
新居へ引っ越してまだ数ヶ月しか経っていないある朝、目が覚めていつものようにカーテンを開けて朝ごはんを食べる。
部屋は昨日のまま特に何も変化がなかった。
普通に綺麗だった。
掃除洗濯ゴミ出し一通りの仕事をこなし、午前10時買い物に出かけようと思い、引き出しからお金を準備しようとした。
しかし、ATMに置いてある封筒に入っているはずの4万円が入っていない。何回見ても空っぽだ。
狐につままれるような変な感じ。同居しているのは夫だけだ。
何故?夫が家出したのだろうか?すぐに夫に電話をした。
「なんで勝手にお金を会社に持っていくの?」冷静に話した。
「は?何言ってるの?意味が分からない。そんなことする訳ないでしょ。」
こちらだって意味が分からない。
「とにかく落ち着いて、他の貴重品が入った場所を確認して。」
夫が声を荒げる。
電話を切り、確認すると通帳、印鑑はあったが、必死に貯めていた金券だけが抜き取られていた。
1階の和室の窓を見に行くと鍵が開いていた。
やられた。うっかり鍵を閉め忘れた私が悪いのだ。
夜中に2階で寝ている時に泥棒が入ってきたのだ。
鉢合わせにならなかっただけでも幸運である。それにしても、信じられない。
顔は青ざめ、気分は沈み、とりあえず警察に電話をした。
現金が置いてある場所だけ、引き出しを開けていった泥棒。
プロだ。あー、むかつく。くやしい。
被害は4万円と商品券2万円だけで済んだ。
あまりに質素なので、泥棒もびっくりして遠慮したのだろうか、夫の通帳が入ったポーチはチャックだけが引きちぎられていて中身はそのままだった。
プロなので足がつかないようにということか。
一人で警察を呼んだ。
一応指紋を取ったが、まあ、出てこないでしょうね。油断しちゃいけませんよ。
プロはよく観察して街をうろついていますからね。
と注意された。
後からお隣さんが、事件から2週間前くらい知らないおじいさんがうちの車庫の枯れ葉を掃いていたと教えてくれた。
お隣さんの目をごまかして演技したな。泥棒。
多分その時に、引っ越してきたばかりの少しだらしない家を見つけて偵察しに来たのだろう。
すごい観察力。枯れ葉が掃かれていない家は鍵もかけていないというのが、泥棒界の常識なのか。
2年後、千葉北署から「前にお宅に入った泥棒がつかまりました。常習犯です。お金は戻りませんが、一応報告しておきます。」と連絡が来た。
とりあえず捕まって良かったが、忘れた頃にまた思い出してしまった。夜中、寝ている間に泥棒が家に上がり込んでいるという図を想像するだけで怖い。
その後、防犯に力を入れたのは言うまでもない。
家の戸締りに気を付けてくださいね。