南アフリカのサファリパーク

今週のお題「怖い話」

小学生の時に、3年間ほど親の仕事の関係で南アフリカに住んでいた。

日本ではまずできない体験ができるからと、何度も野生動物が放し飼いになっている広大なサファリパークへ連れて行ってもらった。

日本の富士サファリパークや那須サファリパークなんて、あれはサファリパークではない。

全部見て回るには1週間はかかると言われる広大なサバンナの赤土の道を自家用車でひたすら走り続け、野生動物を追跡するのだ。

運が良いと、キリンの親子に会えたり、水辺にサイの大群が水浴びしている姿に出会えるが、野生だから近づくと怖いので遠くに駐車して、そっと静かに見守る。

いくつか種類がある内のライオンパークという、ライオンを見るためのサファリに行った時の話だ。

そこはサービス精神が旺盛で、毎日決まった時間、場所に軽トラで死んだプクプクに太った牛を運び地面に置いてくれる。すると、野生のライオンがあちこちから寄ってきて牛をむしりとって食べる。

大体はメスライオンがライバルの様子を伺いながら、牛を獰猛に口で引きちぎり肉をくわえてオスライオンや子どもに運び家族で食べるのだが、まあ大体30頭は集まるのですごい迫力である。

人間は自家用車に乗ったまま、牛、ライオンを取り囲み何十台も輪になり見物する。辺りには、血生臭い匂いが立ち込める。

30分もすると、牛は骨だけになりライオンは何処かへ消えてゆく。ライオンが消えると残骸を目当てに鳥やハイエナが集まってくる。

野生のライオンにはそうでもしないと、なかなか出会えないのが普通なのだが、恐ろしい話を別の日本人家族から聞いた事がある。サファリの道を走っていると、ライオンに道を塞がれた。珍しいので、車を止めて見ているとそのライオンが車のボンネットに登り屋根に登って来たのである。そして、事もあろうに屋根の上で寝てしまった。大人ライオンは大きいので、重さで車がミシミシいう。動くに動けないし、助けを呼ぶシステムもなく、刺激しないように2時間静かにジッとしていたらやっとどいてくれたというのだ。もちろん、生きた心地がしなかったと言う。

思い出すだけで、怖い話と思い出である。